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東京高等裁判所 昭和24年(新を)986号 判決

被告人

恋文治こと

白川彰

主文

原判決を破棄する。

本件公訴はこれを棄却する。

理由

論旨第一点について。

所論に鑑み記録によつて本件起訴状の送達の適否を調査すると本件は昭和二十四年二月十二日東京地方裁判所八王子支部に起訴せられたがその起訴状の謄本は同年同月十五日八王子警察署長宛に送達せられている。しかるに被告人は元同警察署に留置せられていた者であるか起訴の日と同日八王子刑務所に移監せられていて送達当時八王子警察署にいないのであるから同警察署長宛にした送達は無効である。尤も送達は或特定人に届けるための手段に過ぎないから手段である手続に誤ちがあつてもその書類が兎に角法定の期間内に右特定人の手に渡れば目的を達するので送達手続の違法は救済せられると解すべきものであるが八王子少年刑務所よりの東京高等檢察廳の電話聽取書によると被告人は起訴の日から法定の期間である二月を経過した後の同年五月十二日に初めて八王子刑務所において起訴状の謄本を受取つているのであるから法定の期間内に送達があつたものということができない。故に本件起訴状は刑事訴訟法第二百七十一條第二項によつてさかのぼつてその効力を失つたもので原審は同法第三百三十八條第四号に準據して本件公訴を棄却すべきものであつた。こと茲に出てす不法に公訴を受理した原判決は破棄せられべきである。已にこの点において原判決を破棄する以上その余の論旨に対する判断は不必要であるから省略し本件は自判するに適するものであるから以上説明した理由により刑事訴訟法百三第九十七條、第三百七十八條、第三百三十八條に從つて主文の如く判決する。

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